子供の頃、我が家のお正月のテーブルには、
たいていお重が二つ三つ並んでいました。
私の実家は商売をしており、それらは、
お付き合い上買った出来合いのお節料理でした。
蓋を開けると、
伊勢エビやらアワビやら、
あげくの果てには金粉まで飾られていたりと、
まさに豪華絢爛。
来客が多かったので、それはそれで重宝しました。
でも、私が一番好きだったのは、
叔母が毎年差し入れしてくれる手作りのお節。
叔母は独身で美容院を経営していましたが、
今にして思えば、一昔前の美容院は、
着付けとヘアセットのため、年末年始は完全無休で
朝から晩まで働きづめだったにもかかわらず、
よくお節料理まで作れたものだと感心します。
犬が好きで、食いしん坊で、おしゃれで、気っぷが良くて、
歯に衣着せぬ物言いのこの叔母が私は大好きで、
かぎっ子だったこともあり、
物心ついた頃からしょっちゅう遊びに行っていました。
お重の中には、私が喜ぶからと、
ストーブの上でことこと煮た黒豆やお煮染め、昆布巻きなどが、
毎年、ぎっしり詰まっていました。
高級食材も入ってなければ、決して豪勢でもないけれど、
忙しい中、叔母が手間と愛情をかけて作ってくれたお節は優しい味で、
どんな有名料亭のものより美味しかったです。
叔母自身はゆっくり食べる暇もなかったでしょうに。
結婚して、自分が料理するようになり、
料理とは人を喜ばせるためにするものだと、つくづく思います。
そして、毎年、お節料理を作るたびに、
今は亡き叔母のことを思い出します。
私が作ったお節も食べてもらいたかったな。